韓方における食事療法はひとくくりに「薬膳」と呼ばれることが多いのですが、
厳密には次のように三つに分類されます。
 
食養 毎日の食事で病気を予防する。
食療 食べ物の薬的な側面を生かして食事で病気を治療する。
薬膳 食療に韓方生薬を加味して薬効を高める。
こうした食事療法の基礎となるのは、「五味論」と「四気論」という二つの理論です。
五味論は味から、四気論は体を温めるか冷やすか、という観点から、食べ物を考えます。
韓方における食事療法はこの二つの調和を大切にしているのです。
 
五味論では五行の法則に基づき食べ物の味を五つに分類します。そしてこの五つの味が、五臓、つまり五つの臓器に影響を与えると考えます。
 
  <五臓との関係> <体への作用>  
酸味 肝と胆の働きを補う 収斂作用
- たんぱく質を引き締め体を活性化
- 汗が出過ぎるときに酸味のあるものを食べるとよい
- 鼻水・水様便・頻尿にも効く
苦味 心と小腸の働きを補う 固める作用
- 下痢や出血を止める効果がある
- 口内炎や食欲不振にも効く
甘味 脾と胃の働きを補う 緊張緩和作用
- のどの痛みを和らげる
- 筋肉の緊張やコリを緩める
- 急な腹痛や胃痙攣にも効く
辛味 肺と大腸の働きを補う 発汗・発散作用
- 風邪で熱があるときなどにショウガの辛味で熱を発散させる
- 気を体表にめぐらせ風邪の侵入を防ぐ
鹹味 腎と膀胱の働きを補う 軟化作用
- 便秘の改善に効果あり
- おしっこの出をよくしたり、髪のつやをよくする

ブログの五味論記事
1. 病的に甘味嗜好の現代人への警笛
2. 苦い薬で味覚を正し、健康を得ましょう!
3. 陰陽の味 <酸味と苦味で霊魂を引き止める>

糖尿病になったり胃が悪くなると甘いものを食べたくなる、塩辛いものを食べ過ぎると腎臓を悪くするなどは、経験した方も多いのではないでしょうか。
また味には独自の作用や効能があり、病気の改善に利用することもできます。
もちろん特定の味のものばかり食べ続けることは逆効果となりますので注意が必要です。
 
食事療法のもう一つの重要な要素として「四気」があります。四気とは寒、涼、温、熱のことです。食べ物が体に入ったときに、冷やす方向に働くのか、温める方向に働くのかの作用をあらわしています。またちょうど真ん中で寒にも熱にも偏らない平があります。

四気は調理法によっても変化します。たとえば大根は寒で体を冷やすので、冷え性の方はたくさん食べないほうがよいのですが、火を通すと平に変わります。さらに温の食べ物であるショウガを加えて煮た場合、温になるというわけです。

  四気の持つからだへの作用と効能
 
[熱] - 体を温める
- 興奮作用
- 冷え性や貧血症の方によい
- 一般に滋養に富むものが多く、消化機能を高めて元気を増やし、「湿」を取り除く
- 香辛料や栄養価の高いものが多い
- 食べた後実際に体が熱っぽくなることも
[温] - 熱よりも弱いが体を温めたり興奮させたりする作用がある
- 冷え性の方によい
[平] - 寒・涼・温・熱のどれにも属さず、体の中庸を維持する
[涼] - 寒よりも弱いが体を冷やして鎮静化させる
- のぼせ症の方によい
[寒] - 体を冷やす
- 鎮静と消炎作用・毒を消す
- のぼせ症や高血圧の方によい
- 夏場に暑さから身を守るのに役立つ
- 摂りすぎると体の機能が低下する
 
食事で健康をつくり病気を治すという考え方は現代栄養学にも共通しています。
ここでは現代栄養学と韓方の食事療法の違いについてお話します。
現代栄養学では、たんぱく質、炭水化物、脂肪、ミネラルなどの成分やエネルギー量から食品を捉え、食事指導を行っており、生活習慣病の予防などに大きな成果を挙げています。しかしコエンザイムやαリポ酸など、新たな栄養素がブームになることからもわかるように、未発見の栄養素は数多く残されていることが予想できます。また各種栄養素が複合的に作用するときの結果についてはいまだ解明できない部分がたくさんあるのも事実です。

韓方における食事療法は、成分分析ではなくて、長い歴史をかけて判明してきた食べ物の効用に注目します。
たとえば緑黄色野菜はビタミン豊富で、体によい食材の代表とされていますが、韓方的には、冷え性の人が食べ過ぎれば症状を悪化させると考えます。 
また成分からだけ判断するとショウガはカリウムが多いこと以外とりたてて栄養があるわけではありません。しかし韓方では、風邪や嘔吐の特効薬であるとされています。
韓方による食事療法では、食べ物の効能を知った上で、一人一人の体質や症状に合わせて摂ってよい食べ物と控える食べ物を選り分けていきます。